Toshiの詩のブログ

自作詩やその他を、載せていきたいと思っています。現代詩や自由詩ですが、心に染みる詩を書きたいと願っています。

四季の音

それぞれに不思議な焦点を結ぶ
一つ一つの季節を


君は机の引き出しにきれいに整理してしまい込み
鍵をかけて忘れた


冬枯れの薄に気がつきもせず
君は坂道を登って行く


あの薄の穂が空にさしかかるあたり
永遠が青くきらめいていたのに


生きることの意味を尋ねて行った道の途上で
君は途方に暮れている


両手で打って鳴る音を
片手で聞くにはどうしたらいいか


この問い以前の問いに
君はどうこたえるのだろうか


コーヒーをもう一杯
今は冬
揺籃の季節である


肉体

ぼくはきみのやわらかい体を抱いた
きみはぼくの何であるかを
ぼくはきみの何であるかをまるで理解してはいなかった
ぼくらはお互いそんなにも孤独であった


きみのうつくしい胸にふれたとき
きみは恥じ入るように目を伏せ
そうして
ぼくを受け入れた


夜の風が鳴いた


きみはどこまでもやわらかかった
そして
かなしかった


ぼくらに何が生じ何が失われたのか
何も理解することができなかったから


きみは一個の女にかえった
冬の夜の風がまた鳴いた


マイ・ハート

これがわたしの心臓です
ずいぶんしなびて赤いのですが
白い洗濯物と一緒にぶら下がっている
わたしの一つしかない心臓です


風の鳴る夜は、シャツといっしょに
夜の夢が一杯つまった
洋服ダンスの中に
いれておきます


出かける前は忘れずに
洗濯物といっしょに干しておきます
ある朝二羽のヒヨドリが来て啄んだ
これがわたしの心臓です


都市

白い日の光が照る
ビルは都市の海に浮かぶ島々


伝説を忘れた潮流のように自動車は
流れていく
魚群のような人々は
張り巡らされた道を縫って歩く


まぶしく反射する
ガラス
都市に酔い痴れるものたちのため


歪に切り取られた
立体の空
けたたましい航空機が
そこに描く白い直線意志


高速道路は豪華な日除け
その乾いたアスファルトの影から
数羽のハトが飛び立つ


日が沈むころ
あやしく金色に輝くビルがある
束の間
その光に心奪われたものたちは
聳え立つビルたちの
孤独で悽愴な内なる声を聴いたのである


ガードレール


曇天の空に
雨が降る


痩せた
形ばかりの人間が
草の枯れた川原にしゃがみこんでいる


こわばった頬に雨があたる
おお
冷たさに身を震わすのだ
この人間の形をしたものは
もっと冷たい空洞が
胸の奥に空いているというのに


しばらくすれば体は冷えきり
風邪を引いてしまうだろう
彼は持っていたライターで
しきりに枯れ枝に火をつけようとしている


なんと愚かな
なんと頑固な木偶だろう
いまは雨が降っているのだ
そら
枯れ枝はすっかりびしょ濡れではないか
そんなに真剣にならないでくれ
可笑しいじゃないか
馬鹿げてるじゃないか


どうしてそんな理屈に合わないことを
するんだい
少しでも暖を取りたいのか
それならせめて雨がかからないように
橋の下でやったらどうなんだい
乞食と間違われるのがいやなのかい
そんな自恃も君にはあるのか
お願いだから
そんなに真剣にならないでくれ
可笑しいじゃないか
馬鹿げてるじゃないか


君の胸の奥の空洞はどのくらい深いんだろう
それは誰かの胸の空洞とどこかで繋がっているんだろうか
そうして
その底深い暗がりに君は不可能な火を灯そうとする
その底には無しかないにしても


男は枯れ枝に火をつけることを諦めた
曇天の空を見上げると
無数の雨粒が見えた
それは男の胸の底まで落ちて静かな水たまりを作るように
思われた


すると
それはこれであったというわけか


ガードレールが雨に濡れていた
清らかに洗われた肋骨のようだった