Hideのおすすめ本とエッセイと絵と詩等のブログ

おすすめ本やエッセイ、絵、自作詩などを載せていきたいと思っています。

「月下の一群」堀口大学訳詩集 講談社学芸文庫

「海潮音」が文語調であったのに対し、この訳詩集は多くは口語調の詩として、さらに新しい時代の文学に資するために書かれました。やはり、フランスの詩が多く訳されました。「巷に雨の降るごとく、われの心に涙ふる」のヴェルレーヌの詩を訳した詩編は多くの人々に愛唱されました。「海潮音」と比べてみると、格段に近代的な軽さや屈折をもった詩群になっています。訳者の堀口大学自身が、また優秀な詩の書き手でした。


「昔話と日本人の心」河合隼雄 岩波現代文庫

昔話の大家でもある河合隼雄が、長年にわたる研究の成果として世に出した書物です。そのためか本書は、河合隼雄の本の中ではかなり読みづらく理解しにくい本になっています。この本で紹介されている「手なし娘」の話などは、柳田の「日本の昔話」には見えませんが、日本人の心を考える上で欠かせない話柄と言っていいでしょう。まさしく、親から縁「手」を切られた娘の話ですが、現代を生きるわたしたちにも重要な提言を投げかけている物語になっています。ちなみに「手なし娘」は、最後はハッピーエンドで終わる物語です。


「グリム童話」グリム兄弟 池内紀訳 ちくま文庫

グリム童話は岩波文庫にもありますが、わたしはちくま文庫を選びます。訳が良いからです。一見、荒い訳し方に見えますが、物語の真実をそこなわないという配慮がなされた訳です。おなじみの「ヘンゼルとグレーテル」「赤ずきん」「つぐみひめの王」が見えます。女性の成長に欠かすことのできない物語です。「漁師と女房」などは、日本の高度成長期の物語そのものではないかという気にさせられます。この話はまた、日本的な感性さえ感じさせる話です。


自作詩 ケイへ  <改版>

小高い岩山の細い山道を辿り
頂に着くと
わたしは対流圏に閉じ込められているのを発見した
樫の木の枝を握りながら
空がひたすら青くひたすら高いのがもどかしかった


ああ 風が吹いているのだよ ケイ


茶褐色に削り取られた斜面は
わたしの怯懦に適切なくぼみを与えてくれた
どこにもいく場所がないから
わたしはここにいる
ここで覚めきって夢を見ている
確かでそして不安なことだ


ああ 風が吹いているのだよ ケイ


眼下に広がる町並みはわたしの欲情を理解しなかった
片々たる思想が風に吹かれていくように
生活はやがてわたしの鎖骨をすりつぶすだろう


何も案ずることはないよ ケイ


絶望して生きることは
期待して生きることよりやさしい
心の裂け目はわたしのいちばん確かな傷口だ


ああ 風が吹いているのだよ  ケイ
風が吹いてなにやら寒いのだよ ケイ