Sekiの本と詩とエッセイのブログ

おすすめ本や自作詩、エッセイなどを載せていきたいと思っています。

自作詩 桶狭間

時は満ちていた
先刻の侍臣たちの言葉は
枯葉のように彼の頭から散っていった
思念は停止し
ある刹那が現れた
夜明けがた
突如 彼は嬌声を発した


彼はまったく別種の生命体として自らを自覚した
大うつけは狂的に充実した生命に成りかわった
そのとき
時代は彼とともに動きはじめた
しかも
彼は正確で平静な行動家として
茶漬けを食い
敦盛を舞うことさえ忘れなかった


流星が尾を引くように
馬上の彼の後を配下の士卒たちは次第に数を増しながら
雲集していった


輝く軟体動物のように
信長の軍勢は
今川義元の陣に殺到した


そうして
日本はこの男に塗り変えられる
真に新しい人間として
また史上最大の殺戮者として
彼の暗黒にも似た肉体は異常な光芒を放つのである


彼には行動がすべてであった
われわれは今もなお彼の余光をうけている
この聖なる狂人というべき男から