Sekiの本と詩とエッセイのブログ

おすすめ本や自作詩、エッセイなどを載せていきたいと思っています。

菊池寛「恩讐の彼方に」 <知られざる偉人>

菊池寛は偉人です。何がどのように偉かったか説明に困るような偉人です。


文藝春秋という雑誌を創刊し、大衆小説を数多く書いた、実業家と作家を兼ねた人と言えばそれまでなのですが、それだけではどうしても菊池寛という人を掴んだことになりません。およそ、作家と言われる人はその当の人間より、書かれた文章の方が立派であることが、一般なのですが、菊池寛の場合はこれがまったく当てはまらず、書かれた文章より当の人間の方が立派であったという稀な人です。


単なる大衆作家というレッテルを貼られても、そのことをまるで意に介しませんでした。菊池寛には、伝記がありません。自分の自伝を書かなかっただけではなく、わざと誰にも自分の伝記を書けないように生活した人です。


これだけ成功させてもらったなら伝記など無用という考えからでした。これほど、私というものを殺し切って、平然と生きた人もありません。様々な人々にその人たちさえ知らないうちに善行を施しながら、自分自身についてはまったく無頓着でした。本当の無私の精神を体現した人です。


この「恩讐の彼方に」という作品は、人間味溢れた作品になっています。