Sekiの本と詩とエッセイのブログ

おすすめ本や自作詩、エッセイなどを載せていきたいと思っています。

「西行」白州正子 <細き一筋>

古美術の鑑賞によって培われた鋭利な批評眼で、日本の中世を代表する歌人、西行の詩魂を見事に浮き彫りにします。西行は、現代の日本でも人気の高い歌人です。若年にしてみずから世を捨て出家し、旅人として諸国を漂泊し、芭蕉が「奥の細道」の中で「古人も多く旅に死せるあり」と語ったその「古人」のひとりです。


「生得の歌人」と讃えられ、苦い内省が、そのままよどみなくあはれ深い歌となって流れ出る歌風は、当時の和歌の中でも比較を絶した高みに到達しています。白州は、そのすぐれた歌を生み出していく西行の創造力の秘密に肉薄し、そうして、芭蕉が「細き一筋につながる」と言ったその道に推参した喜びを語ります。


「風に靡く富士の煙の空に消えてゆくへも知らぬわが思いかな」この歌を西行の絶頂として掲げ、それから、「願はくは花の下にて春死なんその如月の望月のころ」の歌で終わります。西行は、この辞世の歌の通り、桜の下で、安らかにその八十の長寿を全うしました。白州はそれに、また一輪の花を添えるようにして本書を締め括ります。近来、稀な鋭い分析力と優美な詩情を合わせ持った優れた本です。ちなみに白州正子は、前述の白州次郎の奥さんです。