Hideの本とエッセイと詩のブログ

おすすめ本や自作詩、エッセイなどを載せていきたいと思っています。

「ラ・ロシュフコー箴言集」ラ・ロシュフコー

若い頃の渡辺一夫が、この書物を読み「人生に絶望した」と言っているほど、強烈な毒を中に秘めた書物です。「われわれの美徳は、ほとんどの場合、偽装した悪徳に過ぎない。」この書の中心思想となる巻頭言です。ラ・ロシュフコーはフランスのモラリストですが、人間洞察に格段の炯眼を見せました。著者にはポルトレと呼ばれる短い文章による自画像があります。フランス風のエスプリの利いた苦い味のする、率直に自己を綴った文章ですが、日本風の無邪気な自画像とはまったく無縁の、横目で自分を睨んだ自画像です。書物の内容はじつに苦み走っています。意地悪いと思えるほど、人間性の美徳、輝きとされているものの正体を暴き、その裏に隠れた悪徳をとことんまで追求していきます。一節を引きましょう。「賢者の不動心とは、心の動揺を胸中に閉じ込める技巧に過ぎない。」けれども、人間性という美辞麗句に浮かれ、人間を神の域にまで高めようとする思想に対しては、格好の腐食剤の役目を果たしてくれる書物です。トルストイや芥川龍之介の座右の書でした。皆さんは、この書物をどのように読まれるでしょうか。