Sekiの本と詩とエッセイのブログ

おすすめ本や自作詩、エッセイなどを載せていきたいと思っています。

「南方熊楠<みなかた・くまぐす>」鶴見和子 講談社学術文庫

民俗学、生物学の巨人、南方熊楠の評伝です。南方の著作は膨大を極め、その研究もやっと緒についたばかりです。少年の時の南方は「和漢三才図会」と呼ばれる膨大な百科事典の数十ページを、毎日丸暗記して、とうとう全てを写してしまうほどの驚異的な根気と記憶力の持ち主でした。「ヨーロッパにあるようなものは日本にもあり、日本にあるようなものはヨーロッパにもある」という不思議な信念を携えて、アメリカやヨーロッパを流浪し、持ち前の語学の才を生かし、大英図書館の司書になったりしました。日本に帰ってからは、和歌山県の神島に家を構え、特に粘菌の研究で大きな業績を上げました。南方はまた行動家でもありました。当時最先端の「エコロジー」の思想を唱え、自然保護を訴えて、投獄の憂き目さえ見ています。けれども、未だ、南方の学問の全貌は見えていないままです。これからの研究がまたれますが、この評伝は、その南方の魅力的な風貌をあざやかにデッサンして見せてくれた感があります。南方のことが知りたい人は、まず、この本を手に取ってみることが得策でしょう。