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「カラマーゾフの兄弟」ドストエフスキー 岩波文庫

著者最晩年の非常な傑作です。ある意味で「罪と罰」を越えていると言っていいでしょう。「罪と罰」も含めたドストエフスキーの後期の大小説は、コスミックと言えるほどの大きさを持っているのですが、その中でももっとも円熟した作品です。「カラマーゾフの兄弟」の眼目は、作中人物のイヴァンが語る「大審問官」にあります。人間という獣類に属する動物に、自由など単なる重荷に過ぎぬ。悪魔に荷担した大審問官の語る人間観には異様なリアリティがあり、自由な信仰を求めるイエス・キリストとどこにも接点は見いだせません。小説は、静かな安息に満ちた僧院と行き詰まるような人間関係にせめぎ合う俗世間とを、自由に行き来する人間性の精華とも言うべき主人公のアリョーシャに、人々が胸襟を開いて語ることで、繰り広げられます。この作品も「罪と罰」と同じく、推理小説仕立てになっていて、アリョーシャの兄ドミィトリーに父親殺しの嫌疑がかかります。結末は、この小説を読む人のためにとって置きましょう。「大審問官」をアリョーシャに語った兄イヴァンは、精神の病気に罹ります。幻の紳士とイヴァンとの対話は、現代の精神医学の最先端に位置するほど詳細綿密に書かれた異常な凄味を持った章です。