Hideの本とエッセイと詩のブログ

おすすめ本や自作詩、エッセイなどを載せていきたいと思っています。

「影の現象学」河合隼雄 講談社学術文庫

影は、「もう一人の私」という意識下の自分と見ることができます。この書は、その「影」との内的な対決が、いかに現代人にとって緊急の課題であるかを提言しています。対決とは言っても、相手は自分にとって、もっとも不都合な自分の根幹を成しているものを壊してしまいかねない凄まじい力を持ったものです。この書は、そうしたシャドウの脅威的な力を充分に知った上で、では、どうそれと対峙していったら良いのか。豊富な知見を元に、心理療法家である著者が懇切にその意義と危険性を明らかにした書です。この書を読んだからと言って、明日から「影」との戦いができる。そう思ってしまってはこの本を読んでいないのと同じです。この書の名著である所以は、ユングのいわゆる自己実現がいかに困難な道のりであるかを明らかにした点にあります。興味本位から自己実現に手を出しても意味は生まれません。現代人の根幹を揺さぶる書です。